自治体の事業担当者向けに「自治体の予算作成業務と拠点事業の事業設計に関する調査結果報告会」を開催しました。

2025年7月2日(水)に、「自治体の予算作成業務と拠点事業の事業設計に関する調査結果報告会」をオンラインで開催しました。

報告会では、事業についての行政説明、拠点事業の予算獲得のポイント(大分県の事例共有)、拠点事業実施団体の実態という3つのテーマについて、自治体の事業担当者の方々に共有しました。

 

【開催概要】

– 日時:2025年7月2日(水)14:00-15:30  

– 形式:Zoomによるオンライン開催  

– 参加者:社会的養護自立支援拠点事業を実施している35自治体の担当者57名

 

【スピーカー】

こども家庭庁支援局家庭福祉課課長補佐 岩瀬豊明氏

えんじゅ事務局:今井峻介(調査担当)

 

【概要】

1.事業についての行政説明

本事業は社会的養護経験者や虐待経験がありながら公的支援に繋がっていなかった方々が孤立することを防ぎ、必要な支援へ適切に繋ぐことを目的としています。主な活動は、相互交流の場の提供、生活・就労等に関する情報提供や相談支援、関係機関との連携調整で、これらは必須業務とされています。
また、帰住先を失った方々へ一時避難的かつ短期間の居場所を提供する活動は、地域の状況に応じて実施が可能です。都道府県や指定都市、児童相談所設置市などが実施主体となります。令和7年度からは開設準備経費も出せるようになっています。

  

 

2.拠点事業の予算獲得のポイント(大分県の事例共有)

社会的養護自立支援拠点事業は、現在様々な課題に直面しています。事業予算額には最小値と最大値で5倍もの開きがあり、特に1500万円未満と2500万円以上で二極化が見られることが報告されています。自治体担当者へのヒアリングからは、「本当に必要な成果が得られるのか」といった説明の難しさや、支援にケース終結の概念がないため利用者が年々膨らむ懸念が挙げられています。

 大分県の事例からは、予算要求時には「課題提起8割、資料説明2割」という考え方のもと、事業の法的・制度上の位置づけを明確にする、財政部門に現場を視察してもらう機会を作る、実相談ケースを20例集めて心理職の配置や一時避難場所の必要性を分かりやすく伝えるといった工夫をすることで、必要な予算額を確保していました。

 

3.拠点事業の実態

事業実施団体へのアンケート「対応に時間がかかるケースが多い」「エリアが広すぎる」「当事者の数が多すぎる」といったキャパシティや、「持ち出しでお金を出している」といった財政面に課題があることもわかりました。また、団体によって課題認識が大きくことなっていることもわかりました。

えんじゅが実施した拠点事業所の参与観察結果からは、事業利用者と共に病院に同行すると4時間かかるなど、相談支援業務の人的負荷の大きさが見えてきました。

また、相談業務以外にも「居場所運営」や「チームミーティング」「他機関との連携」「研修」「事務作業」などが不可欠で、相談支援に割ける時間は業務時間の約6割に過ぎないことも示唆されました。

 

また、事業所間で相談件数のカウント方法が大きく異なり、自治体間で数値の比較に意味がない、つまり、事業の成果を客観的に評価することができない、という問題が起きていることも明らかになりました。えんじゅでは、業務の実態に即した新たな評価指標の設計が必要であると考えています。

 

【参加者の感想やフィードバック】

・拠点事業に1日同行した内容等は、実態を把握するうえでとても貴重な情報となりました。また、予算獲得の他自治体の様子等も参考になりました。このような情報共有の場を設けていただき、ありがとうございました。

・本日のえんじゅさんのお話に、大きく頷きながら、参加しておりました。予算獲得には数値と実績が求められる一方、本事業は数値でははかれない(はかる目的ではない)ことから、その難しさにぶち当たります。ですが、えんじゅさんの参与観察のお話は、新しい視点から本事業をみることができ、とても勉強になりました。特に「相談業務の数値化」をしていた図は、予算要求時、大変有効だと思いました。

・相談件数のカウントについても、他自治体と統一されていないものを他県の状況として出しても意味がない、ということを言っていただけたのが個人的には一番納得感がありました。予算課にはよく他県状況を出すように言われますが、一義的に比べられるものではない、ということを示すデータも、今までなかったので参考にさせていただければと思います。

・今回、えんじゅ事務局がヒアリングした内容を伝えていたが、実際の自治体や受託事業者が直接伝える場も今後はあってもよいのではないか。ただ、あれだけの内容をヒアリングして発表するとなると相当なヒアリング量と自分なりに解釈して伝えないといけないので大変な作業だと感じた。お疲れ様です。

・昨年度の今の時期にこういった場を設けてほしかった。

・今年度担当者が全員入れ替わったので全体像や他都市の状況もわかっておりませんでしたが、今回の勉強会で事業の全体像等も把握できて大変勉強になりました。丁寧に説明いただきありがとうございました。

・本年4月に配属され、全く新たな分野として担当することになりましたが、他自治体の具体的な事例等について聞くことができ、本事業についてより具体的なイメージをつかむことができました。また、漠然と感じていた課題等についても、他自治体でも同様の課題意識があることや、逆に自治体間で大きく異なることがあるなど知ることができ、通常であれば能動的な情報収集がなければ得られなかったようなことが知れたため、たいへん貴重な機会となりました。

・ありがとうございました。理論的な話が多かったので、次回、他の事業所がどんなことをしているのか(誰を対象に、どんなことを)をより具体的に教えてもらえると大変助かります。

 

【問い合わせ先】  

本報告会の資料の詳細を希望される方は、問い合わせフォームからご連絡ください。

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